WORK
YSN:ゆっくり・しっかり・のこす「着物を考えるための調べもの」第二弾
OVERVIEW
1720年に創業した呉服メーカー問屋「矢代仁」による展示。創業350周年に向けて「いま考えるべきテーマを、自由な視点でときほぐす」を目的に始動したプロジェクト、YSN:ゆっくりしっかりのこす「着物を考えるための調べもの」の第2回として開催されました。
同展では「うごく・かさなる・"きもの"になる」編と題し、「着る」をキーワードに4つの「調べもの」を展開。「動きとシワ」「着付けのイロイロ」「"着る"の音を見える化」「(きものの)しまいかた」という視点で、人に着られる"きもの"と、"きもの"を着る人の関わりにフォーカスを当てています。
RESPONSIBILITIES
BASSDRUMはテクニカルディレクターとして、企画初期の抽象的な思考段階から展示の具体的な設計・実装までを一貫してリードし、技術と表現の両面からプロジェクト全体を支えました。これまでの矢代仁の取り組みを踏まえ、「何を調べるのか」「どの現象を観察すべきか」という根本的な問いを立て、主催の矢代仁取締役の矢代真也氏やディレクターの須田伸一氏と議論を重ねながら方向性を定めていきました。
本展では、大きく分けて三つのコンテンツを開発しています。
ひとつ目は、受動歩行をモチーフとしたキネティックオブジェクトです。BASSDRUMが企画・設計・開発を担当したこのオブジェクトでは、人の”歩行"を模した構造を物理的に再現し、布や身体の運動との対応関係を体験的に示すことで、着物の動きが生まれるメカニズムを感覚的に理解できるようにしています。
二つ目は、モーションキャプチャとスローモーション撮影を用いた歩行の比較コンテンツです。慣性式モーションキャプチャと画像ベースのAIモーションキャプチャを組み合わせ、股関節の角度や足運びなどの違いを可視化。布の揺れや裾まわりの挙動をスローモーションで記録し、肉眼では捉えにくい差異を観察できるように設計しています。
三つ目は、「シワって、悪いもの?」をテーマに、風合い計測技術「KES®」によって得られた織物の物理特性をもとにした、裸眼立体視ディスプレイで独特なシャリ感を持つ織物“御召”の特性を体験的に理解できるコンテンツです。織物の剛性や回復性といった数値的データを、直感的に捉えられる形に翻訳し、報告書的な提示に陥らない表現を目指し、開発しました。
これら三つのコンテンツでは、数値やデータは”目的”ではなく、”問いを立てるための手がかり”として扱われました。BASSDRUMは、その概念設計からデータ取得、ハードウェア開発、撮影、ソフトウェア開発までを横断しながら、「しらべる」という行為を技術的かつ体験的に翻訳する役割を担いました。
また、本展示に関連して行われたトークイベントにも登壇し、モーションキャプチャによる歩行解析の背景や、データと感覚のあいだでどのように「しらべもの」を形にしていったかを紹介しました。さらに、展示制作のプロセスや実験的な試みの意図を共有し、観客とともに着物と身体の関係を考える場として締めくくりました。
THE CLIENT AND OUR TEAM
- Client: 矢代仁
- ◼️ 全体:
- Planning & Design: 池田 航成 / 小川 恭平
- Tech Directors: 池田 航成 / 小川 恭平
- Exhibition Designer: 池田 航成
- Project Manager: 池田 航成
- ◼️ コンテンツ 1:
- Device Developer: 毛原 大樹
- ◼️ コンテンツ 2:
- Content Developer: 小川 恭平
- Controller Device Developers: 園田 元基 / 池田 航成
- Cinematographers: 小川 恭平 / 西郷 利基
- Screen Designer: 米山 菜津子
- ◼️ コンテンツ 3:
- Software Developer: 小川 恭平
- 3D Modeler: 小川 恭平
- Controller Device Developers: 園田 元基 / 池田 航成
- Screen Designer: 米山 菜津子
- ◼️ 協力: Kizai / 京都産業技術研究所